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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン13」
  ~ポケモンGO、台湾新総統就任、参院選挙と都知事選、南シナ海領有権
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(櫻梅通信 2016/10号 日台文化協会)

・新総統就任(台湾)

 2014年3月の台湾でのひまわり学生運動は、同年9月、香港での雨傘革命へと伝播した。台湾も香港も素晴らしいのは、若者が世の中を変えて行こうとしていること。その活動で非暴力を貫いていること。そして、最終的な撤退のための通路(タイミング、相手との妥協点、長老らの認知)を得ていることだ。未来のリーダーらを無下にしない、それは自分達のいつか来た道だからである。

 台湾では、その学生運動の関係者(ブレーン)らを中心に、新党「時代力量」が誕生し、若者の支持を集める。民進党は「時代力量」と連携し、若い世代を中心とする新しい台湾の価値観をうまく引き寄せ、自らが変革することで、再度台湾をリードする機会を与えられた。7月に入って行われたワシントンポスト紙との単独インタビューで、蔡総統は、女性候補だから選ばれたのではなく、有権者が求める、望む方向へ国民を導くスキルと経験が評価されたと胸を張る。(参考URL:https://www.washingtonpost.com/opinions/2016/07/21/44b0a1a4-4e25-11e6-a422-83ab49ed5e6a_story.html)

 中国側は蔡政権への対抗策を強める。中台両岸の交渉窓口を一方的に閉鎖したほか、中国の旅行会社に対し、台湾への観光ツアーを減らすよう圧力をかけており、中国大陸からの観光客が減少している。

 こうした事態、挑発に対して、民進党は言質を取られないよう慎重に動いている。台湾ネットユーザーが発信したパロディー広告がウィットに富んでいるとして話題になった。地方の自然豊かな風景等の写真に「中国人観光客が来ないことで静寂が蘇る」「人気スポットでもホッとできる」「地元の生活を満喫」「本当にリラックスできる」といったメッセージを表現したものだ。(参考URL:http://shanghaiist.com/2016/07/23/taiwan_no_chinese_tourism_ads.php)

 蔡総統が党主席当時設立した「小英教育基金会」の関連サイト「想想論壇」は、そのパロディー広告を引用しつつ、中国からの観光客減少分(-12.25%)を外国人客増加分(15.95%)が補っていることを示した。香港はあまりに中国シフトして屋台文化を始め、様々な食文化とライフスタイルが打撃を受けたとしている。まさに台湾は観光資源を再活性化すべく知恵を絞る時期に差し掛かっていると分析している。(参考URL:http://www.thinkingtaiwan.com/content/5580)
もっとも、台湾観光局はパロディー広告を批判し、観光は相互交流に重要であり、中国からの観光客を歓迎するとの声明を出している。

 このあたり、日本も他人事ではなく、ASEANへのインバウンド(中国以外の国や地域、特に東南アジアからの観光客誘致)アプローチを強めている。

 中台関係だが、ここ10年ほど中国の安い労働コストを利用したものづくりの指導と製品の海外再輸出、SPA(商品企画から生産、物流、販売まで一貫して関与する製造小売業)ビジネスへの貢献で、ウィンウィンを保っていたが、ここ数年、中国の労働コストの上昇に加え、中国自身が企画・生産ノウハウ、指導力を身に着けていることから、中台両国にはライバル関係が芽生えている。

 台湾は、次の時代に備えるため、イノベーション(創新)に特化する傾向を強めている。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)などウェアラブルでの自動化社会、ロボット社会でのナレッジ提供を急ぐところだ。

・参院選挙と都知事選(日本)

 2016年7月10日の参院選挙では、自民党が圧勝した。無所属からの入党を加えると、参議院でも単独過半数を確保し、安定した政権運営を確実にした。同じ与党の公明党は、自らの政権与党内での地盤沈下を怖れている。選挙前、一部日本の識者は、憲法改正、消費増税含め、自民党にこれ以上の権力集中は避けるべきと訴求していたが、現実には自民党候補に対抗できる野党候補が見当たらず、自民党候補が順調に票を伸ばした形だ。

 野党は、日本共産党がかなり自由度の高い政策提言での歩み寄りを見せ、一人区すべてで統一候補を立てる野党共闘を展開したが、与党への脅威とはならなかった。民主党は維新の党と合流し、「民進党」に改名して刷新を図ったが、党名変更による有権者への混乱が懸念されたほか、野党共闘とはいえ、共産党という党名への一部議員、党員、有権者らの抵抗感は簡単には払拭できないでいる。そもそも、野党は与党の施策への反対ばかりを唱え、具体的な対抗施策がないことが指摘されている。理想や希望はその通りだが、では財源をどこで確保するのか、具体的なアプローチを問われると、答えが出てこない。あるいは、経験を有する人材がいない。旧民主党が政権担当時に、初めてとはいえ、かなり混乱したことが未だ有権者の脳裏に焼き付いている。


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