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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン13」
  ~ポケモンGO、台湾新総統就任、参院選挙と都知事選、南シナ海領有権
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(櫻梅通信 2016/10号 日台文化協会)

 2016年夏。

 「ポケモンGO」が大きな話題となるなか、アジアでは海洋進出を巡る中国へのけん制、新総統誕生による中台関係、中国、香港の出版業界での表現の自由などがキーワードとなっている。

 前回の本コラム(2015年3月)で言及した「インバウンド」は、2016年前半で訪日外国人客数がすでに1000万人に達し、前年より伸びている。ただし、中国国内の不景気や、国外で購入した品への課税強化なども手伝い、爆買いに停滞傾向が見えている。一方で、体験型の観光にも関心は向いており、旅行の本来の楽しみへと業者側も知恵を絞る時が到来した。

 隣国台湾では、「民主化選挙」により2016年5月、民進党の蔡英文氏が新総統に就任した。初の「女性総統」でもあり、アジアでは政治家一家ではない家庭からの国家リーダーの誕生でもある。

 日本では2016年7月の参院選で、自民党が再び躍進し、一部野党を含む4会派を合わせた「改憲勢力」が3分の2議席を確保した。「アベノミクス」による経済浮揚と、消費税10%への増税が改憲にお墨付きを与えるものの、英国のEU離脱による世界経済の減速が気になるところだ。いみじくも、G7伊勢志摩サミットで安倍総理が指摘した「世界経済失速、2008年のリーマンショック前夜と似た状況」への懸念が的中した形だ。

 その日本は、「ポケモンGO」や、「ソニープレイステーションVR」など、再び世界をけん引する製品群が注目を浴びている。

 ASEANでは、南シナ海への中国の海洋進出を巡ってフィリピンが提訴した裁判で、常設仲裁裁判所が中国の主張を国際法上の根拠がないとした。中国は、判決を無効として無視しようとしている。また、台湾は国際法や海洋法には従うものの、欠席裁判で、蚊帳の外は許さないと主張している。

 日本の失われた20年からの復活。その間、中国と韓国が急成長を遂げ、台湾は中国の安い労働力を活用し、中台蜜月を演出したが、2016年は次のパラダイムシフトへの入口にあると言える。

 欧米を中心に収まらないISからのテロ。ロシアを巡るパワーポリティクス。独自の強気路線を貫く中国に対し日本、ASEANがどう連携を深めていくのか。様々な要因が複雑に絡まり合い、新たな幾何学模様を織りなそうとしている。

 以下、2016年7月末までのアジア情勢の記述である。

・ポケモンGO(日本)

 「ポケモンGO」が大きな社会現象を起こしている。スマートフォンの位置情報を利用し、地図上に表示された場所で架空の生き物(ポケモン)を捕まえていくゲームだ。ポケモンGOは、技術的には、AR(拡張現実=オーグメンテッドリアリティ)を活用する。私たちの環境(視界)に、疑似的に作り込んだ映像や数値情報が重ね合わせて表示される状況を指す。

 もう一つ、作り込まれた疑似的な世界に私たちが入り込み、没入するVR(バーチャルリアリティ、仮想現実)も注目されている。

 いずれにせよ、ARやVRにより私たちを取り囲む環境が一変する。つまりは、仕事や生活がこれから新たな局面(パラダイムシフト)を迎える。

 7月6日に米国や豪州などで先行サービスが始まったポケモンGOは熱狂的な人気を集め、本家本元の日本のファンをやきもきさせた。配信まで待てず、米西海岸にポケモンGOを体験しに行った日本人ヘビーユーザーも存在する。

 7月22日(金)午前10時30分前後に日本で配信が始まると、任天堂の株価が上昇。夕方から夜にかけてはアクセス集中により、サーバーがダウン寸前の騒ぎとなった。週末にかけて街中にはスマホ片手にポケモンGOに興じる人々が目に付くようになった。米国では、リリースされて3週間、全てのポケモンを収集したつわものも登場している。

 ポケモンGO人気で再認識されたのが、アニメ、ゲーム、カワイイなどのキャラクターやブランドの創造と育成は、やはり日本がトップだということ。ただし、スマホなどにソフトウェアを取り込む場合、米国が主戦場となる。

 日本にとっての可能性は、世界でいち早く提携店舗制度を活用したマクドナルドが、マーケティングのテストケースになりうる。国内のマクドナルド全店舗が、多様なアクションができるスポットとしてマップ上に表示されるという仕組みだ。(参考URL:http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2016/promotion/promo0722a.html)。今後、集客のためのツールとして、観光振興への応用事例も増えてこよう。新しい市場を創造するためには、それらに親和性の高いエンドユーザーが求められるため、引き続き、当該分野での日本の優位が光る。

 ポケモンGOのブームにより、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の注目度も高まっている。今年は、こうしたゴーグル等周辺機器の製品化が進み、AR/VR元年とも言われている。日本では、ソニーのPSVRやエプソン、ブラザー、ソニーなどの透過性ARグラスが登場している。

 日本のアニメやゲームのファン層は厚い。ポケモンGOに関しては、その牽引役は、ポケモンゲームが登場した頃に10代だった今の30代。通勤・通学途中に堂々と漫画本を読めるのは日本だけで、大人でも普通に楽しめる文化が根付いている。その日本をリスペクトし、世界中のオタク(ギーク)が参拝する様は、西海岸のシリコンバレーに匹敵する。この人材をどう取り込むのか、或いは留学生やその予備軍が、こうしたアニメやゲーム、それらのデザインやプログラムの分野で活躍できる仕組みが求められていこう。 


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