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「海外出張、危険はすぐ隣に」

CEOブログ「e戦略の視点2」
2015/06/12

少し前ですが、日経産業新聞の取材を受け、
「海外出張、危険はすぐ隣に」(2015年5月1日付)として、
掲載されました。

以下、要点を捕捉しながらの解説。

(最近のケースだと、韓国のMERS、中国の揚子江での客船転覆事故などを想起し、置き換えること)

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日系企業の活動がよりグローバル化し、中小企業も否応なく海外へと向かう時代。危険な場所でも、売り込みに行けと発破をかけられる。

大手企業(メーカー)も商社などを見習い、様々な困難を経験し、自社のリスクマネジメント体制を構築してきたが、中小企業、新興企業(ベンチャー等)では、まだそこに至っていない。

かつて、90年代、まだ大丈夫だと高をくくっていたら、商社マンはいなくなり、同業他社メーカーもリスク対応していた。これに対し、のんびり構える自社の体質に辟易して、転職がよぎる。実際に、帰国後に退社した人も少なくない。

駐在員はそれなりに危険を察知するようになるが、急な出張先、不慣れな国ではどうすればよいか。あるいは海外出張初心者では、どんなことに留意すべきなのだろうか。

(1)シグニフィカントデー(重要記念日)

海外出張や旅行でまず考えるべきは、祝日や祭日。大型連休に当たると仕事どころではないし、公共交通機関が人であふれかえる。

あと、大型イベントや展示会があるときなどは、ホテルが取りにくい。

インドやパキスタンなど、地域によっては、年末になると、列車の襲撃や爆破が起こる。特に国境沿いの紛争地帯では、それぞれの民族が、普段は普通に仕事や生活をしているのに、物騒になる瞬間が訪れる。やられたらやり返すなど、それぞれの地域での過去の出来事を把握し、巻き込まれないことも大事になる。

誰かが殺された、国が始まるきっかけとなった革命、隣国との紛争で勝ったなど歴史的にも重要となる日には留意が必要だ。同じく、それらが日本とどういう関係性を持つのかを考えておく。

(2)同じキーワードを含んでいる事件事故

米国で白人警官が黒人少年を手荒に扱ったり、死亡させたケース。それらが、キーワードとして注目されることで、類似ケースの発生に対しナーバスになり、デモなどの圧力と、その取り締まりで、次の事件を誘発する。

もともとあったものなのか、あるいは事件を契機にさらに増加したのか。原因と背景の特定は困難だが、注意喚起が必要だ。

(3)上司の武勇伝を鵜呑みにしない

初めての海外出張、海外旅行で、上司や同僚から色々な経験談を聞くだろうが、現在と当時では、若干、事情が異なることもある。だからといって、ネットで検索した「武勇伝」をそのまま鵜呑みにすると、こちらの外見や、たまたま出会った人との交流だったりする。

日本で危険なことは、現地でも危険である(深夜の辺鄙な場所でのトランジット、タクシーやバス待ち)。親しげに話しかけてくる外国人の日本語がうますぎる場合、留意が必要だ。

(4)他国の海外安全情報に接する

もう一つは、外務省などが海外安全情報を発表しているが、旅行会社や国と国の関係で、あまりに早い段階で「あの国は危険です」といった警告は出しづらい。

できれば、米国や英国が提供する安全情報に接することを薦める。米国では、CIAファクトブックというのが一般的である。ただし、それは、欧米諸国から見た欧米人への注意喚起であり、アジア人(日本も中国も韓国も台湾も香港も、欧米人からは区別がつかない)には、通じないケースもあるので、置き換えて考える。

(5)無理なスケジュールを避ける

日本からのヨーロッパ便は、トランジットのためのハブ空港に到着すると、日本時間では夜中の02:00、03:00になる。そこからさらに乗り換えて目的地に向かうと、現地到着は日本時間の翌朝05:00あたり。日本出発から考えると、24時間起きている状態になる。

海外出張前には、寝不足の日々。さらに前日準備で徹夜すると、二日間寝ていないことになる。そして、機内で酒を飲み、映画を見てはしゃいでいたツケが到着後に巡ってくる。

旅慣れてくると、ビジネスクラスで十分にリラックスし、現地での仕事に備えるが、海外出張初心者はエコノミークラス。狭い機内で十分寝られず、周りの騒音や旅行気分に引きづられ、ついつい気が緩む。

予算や日程など会社規定との兼ね合いもあるが、自分の身は自分で守り、格安チケットでは、トランジット時間が通常より長い場合もあり、ハブ空港(スキポールやシャルルドゴール)が便利だからと、無駄な時間を過ごす必要はない。

夏休み期間などには、空港そのものが、トランジット用のビジネスエリアの改装を行っている場合もあり、十分に休めない(閉じた空間、充電施設、シャワールームなど)のケースも少なくない。

(6)仲間内でつるまない

仕事の交渉が終わり、現地駐在員とちょっと一杯、お疲れ会をする。日本では当然の商習慣であるが、旅の思い出、旧交を温め合うなどで、つい数人でつるんで、店へ行く機会も多いだろう。

場所にもよるが、日本人同士、日本語での接待文化。店側もぼったくりやすい。こうしたぼったくりのトラブルをいくつも聞く。

最新ケースでは、中国の東北地方に、現地採用のために出向き、ぼったくりと分かって店を出ようとしたが、なかなか出してくれなかった例などがある。(飲んでいない空のビール瓶が机の下からごっそり出てくる。店の従業員への多額のチップを要求するなど)

リゾート地を訪れているのであれば、週末や夜用に、スーツではない服装を用意することも一つの発想だが、皆がスーツ姿でネクタイを外して歩いているなか、一人だけリラックスしたファッションも浮いていて、逆にターゲットにされやすい。

同僚や上司とつるんでいるときは、仲間内への配慮に意識が向かいがちだが、そこは冷静に、周囲の環境、特に、スリには気を付けたほうが良さそうだ。

(7)PCのパスワード管理、帰国後の変更

アポ先に出かけるときは、面倒だが、荷物=トランクの中に、貴重品やPCをしまっておく。カギをかける。万が一なくなっても大丈夫な内容のものを、出張用のPCにする。

(基本姿勢として、滞在ホテルの部屋は、清潔に整理整頓しておく。荷物が動かされているかを確認する)机の上にわざと小銭、お菓子、飲みものを置いて、チェックする。

もう一つは、パスワードが机の上の天井に設置されたカメラから盗み取られるケース。社会主義国、共産圏で、かつてあった手口だが、帰国後に、ログイン履歴などから身に覚えのないアクセスがあることで発覚する例もありうる。あらゆるところから、パスワードが見られていることに留意すべきだ。

(8)出張先の週末

タイトなスケジュールが無事終わり、“魔法の一日”がある場合は、留意が必要だ。週末だからと郊外に足を伸ばす、現地駐在員や現地採用の同僚が運転手を買って出る。

あるいは、借り上げハイヤーで一日ドライブ。

それよりは、ホテルお勧めのプランで一日観光するほうが確実であり、安全かもしれない。

無理なスケジュールで疲労がピークのときのリラックスには留意したい。

金曜日や土曜日、繁華街のクラブやレストランに、白人が多く集合する場合、それらが軍関係者であれば、爆破テロの標的になりやすい。

(9)帰りの空港

最後の最後に、スリや置き引き、偽物をつかまされるケースが後を絶たない。最新のiPhoneやアップルウォッチ。本物を見せてから受け渡すのは、グーグル稼働のなんちゃってというのもある。

ブランド品のコピーなのは分かっているけれど、つい購入。同僚への受け狙いのつもりだとしても、日本入国後に、没収される。

世話になった同僚から頼まれた日本への荷物。なるべく送ってもらうにこしたことはない。まして、空港で一緒になった人から、荷物が超過しているので、日本まで持っていってくれなどは、もっての外。

荷物に麻薬など違法なものが入っていると、摘発され、問答無用で有罪に。アジア諸国では、死刑判決にもなりかねない。

(海外旅行のケースでは、タイでトランジットして豪州に向かうツアーで、参加者全員がタイで旅行鞄を盗まれ、旅行会社のツアー担当者が急遽新品の鞄を買ってきたが、その旅行鞄の中に麻薬が仕込まれていて、豪州で有罪となったケースなどがある)

(10)会社側のマネジメント

上記は、出張者からの見立てだが、会社側としては、TOEICの得点だけでは、契約や交渉に不可欠な英語力は身に付かない。難しい交渉には、通訳や英語の得意なスタッフを派遣することを検討するのがよい。

そのとき、現地で英語が出来なくても、意思決定可能な経営層の同行。スピード化が欠かせない。

また、社員が今、どこに出張し、スケジュールはどうなっているかの把握。社員が自分で航空券を手配するのではなく、会社経由で購入し、第三国などへの出国を含め、管理する仕組みの構築。

あと、守るのは、正社員までなのか。アルバイトスタッフは?さらに子会社、孫会社については、役員までなのかなどの規定を設ける。緊急時に、どこまでが自社として守る範囲なのかを特定しておくこと。

リスクマネジメントにはコストがかかるが、ビジネスの仕組みとして整備することで、従業員、取引先の信頼を得られる。




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