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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン12」
  ~アップルウォッチ、戦後70年、東日本大震災
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(櫻梅通信 2015/5号 日台文化協会)

 2015年春。

 キーワードは、インバウンド(海外からの旅行客の取り込み)と、ウェアラブル(身に着けるコンピューター)。どちらも、「移動」がテーマとなる。

 北陸新幹線が2015年3月14日に開業し、従来4時間弱かかっていた東京-金沢間が、2時間半で結ばれた。

 京都では、外資系高級ホテルの開業が相次ぐ。

 ビザの発給要件の緩和と円安で格段に訪れやすくなった日本。市場の拡大と、購買力を存分に発揮してくれる富裕層の滞在が期待されている。

 一方、今年はウェアラブル元年。アップルウォッチもいよいよ4月24日に発売される。スマートフォンとの親和性が高いスマートウォッチがブームになるのか、迎え撃つスイスや日本の老舗時計メーカー(高級機械式)がどう動くのかが注目される。

 その2015年は、戦後70年でもある。3月21日には3年ぶりに日中韓外相会談が開催されたが、共同発表には「歴史を直視し、未来に向かう」と明記され、今夏の「安倍談話」への牽制とも受け取れよう。

 アクセントは、過去に置くべき(温故知新)なのか、未来志向なのか。いつの時点からどこに視点を向けるべきなのか。

 分かち合うには、流暢な会話力を会得するだけではなく、文化を学び、真の友人を得ることが肝要だ。OBOGだけでなく、現在進行形での留学生やその予備軍が、平和への礎(いしずえ)になる。

 以下、2015年3月30日までのアジア情勢の記述である。

・アップルウォッチ狂想曲

 米アップルは3月10日、半年前(昨年9月)に予告していた「アップルウォッチ」の発売日を、4月24日(金曜日)と正式に発表した。まずは、日本を含むオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、英国、そして米国の9か国での販売を予定している。

 世界の主要市場での一斉販売となるが、シンガポールが外されたことで、当該国ではがっかりする声が相次ぎ、本物のりんごを時計に括り付けたパロディーがネット上を賑わせた。IT立国を標ぼうするシンガポールとしては、気落ちするところでもある。

 アップルウォッチで注目されるのは、そのプライシング(値付け)である。もともと、アップルは、プライシングに定評がある。iPhone6では、容量を16GB、64GB、128 GBとし、意図的に32GBを用意しないことで、売上を伸ばした(32GBを使う人が64GBを購入)。

 昨年9月の段階では、アルミ素材の廉価版であるアップルウォッチ・スポーツの価格を349ドル(4万2800円)と発表していた。多くの人が欲しがるのであろうステンレス製のアップルウォッチ(普及版、中位機種)とアップルウォッチ・エディション(高級機、上位機種)については発表されなかったため、直前には価格に関するさや当てが続いた(つまり、メディアを賑わし、自社の宣伝になる)。

 蓋を開けてみれば、噂通りだったが、アップルウォッチ(中位機種)は6万6800円~13万2800円で、通常の時計の価格帯となる。アップルウォッチ・エディション(上位機種、ゴールド)は128万円~であり、高級ファッションブランドの時計(装飾を施し、100万円超で売買される)と同じ価格帯に並ぶ。全て税別。

 ITメーカーを中心に、これまで発表、販売されてきた既存のスマートウォッチが、3万円前後の値段で勝負に出るなか、アップルウォッチの値付けに、アップル社が頭を使ったことがうかがえる。というのも、時計としての実用性を全面に打ち出す15万円~80万円前後の価格帯を一切出していないからだ。このクラスには、日本(セイコー、シチズン、カシオ)やスイス勢(ロレックス、オメガ)のブランド時計がひしめきあう。

 アップルが考えるウェアラブル(身に着ける)コンピューターは、ファッションとのコラボレーションを優先し、ブランドを創造する。そうした盤石な状態で、さらに他を圧倒するものづくりからのクオリティの追求を続ける(アップルウォッチで言えば、強度を増すために金とセラミックを混ぜ合わせた金金属基複合材料の製法で特許を取得している)。

 しかし、アップルウォッチに弱点がないわけではない。普遍的(一般的)なデザインではあるものの、時計以外の機能を盛り込み、手首の座を死守する時計業界に殴り込みをかけているが、バッテリーの持ちはわずかに18時間程度。1日一回の充電を必要とするため、時計として物足りない。時計業界では、自動巻きの維持できる時間を72時間程度まで延長し、リザーブ機能を有することで、ユーザーのニーズに応えることが出来ている。

 『時刻は、携帯やスマホを見れば良い』ということで、時計市場からユーザーを奪ってきた携帯&スマホ業界だが、今度は、手首にハイテク時計を身に付けさせようとするあたりに、もう一波乱ありそうだ。

 「イノベーション(変革)」は、人々に驚きを与えるだけでなく、それらが定着し、新たな「日常」になることを指す。アップルウォッチは、アップルによるさらなるイノベーションなのか、単なる「瞬発芸」に終わるのか。ジョブズ亡き後の初めての新製品(ガジェット)の投入成果を、関係者が固唾を飲み、見守っている。


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