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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン11」
  ~香港雨傘革命、韓国フェリー沈没、iPhone6発売、ノーベル物理学賞
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(櫻梅通信 2014/11号 日台文化協会)

 2014年秋。

 前回に続き、アジアの動静が世界から注目されている。

 10月発表のノーベル賞では、物理学賞に日本の研究者らが選ばれ、科学技術立国の基盤が証明された形だ。平和賞は、パキスタンのマララ・ユスフザイさんが若干17歳で受賞した。

 17歳と言えば、香港での民主化デモの学生リーダーも同年齢だ。10万人を動員した香港占拠は、3月の台湾での学生による国会占拠同様、次世代のリーダー登場が注目を集める。

 韓国では、4月に発生した大型フェリーの沈没事故を巡り、真相究明が続くなか、緊急時の対応能力が問題視されている。

 その韓国がいずれ半島を統一する時、北朝鮮はどのような状態にあるのか。金正恩第一書記の動静が9月以降、40日にわたり報道されなかったことから、権力不安説など様々な憶測を呼んでいる。

 日本は、消費税を8%まで上げたが、景気の中折れが見える。高齢社会での財源確保を優先するため、景気回復への不安が広がる中、さらなる増税で国民の生活に影響を与えすぎて良いのか、政府も判断に迷うところである。既に、来年の春闘で、強気の賃上げを目指すようだが、中小企業、引退した高齢者の吐息が聞こえてくる。 

 以下、2014年10月20日までのアジア情勢の記述である。

・香港雨傘革命

 香港で9月下旬、大規模な民主化デモが始まった。2017年に行われる行政長官選挙の選挙制度を巡り、香港政府への不信感を抱く市民らが参加しているもので、金融や商業、観光の中心となる3つのエリアと、それに至る路地や幹線道路などが占拠されている。

 デモは、黄色い雨傘が運動の象徴となっている。これは、9月末の最初の鎮圧で、警官隊が催涙スプレーを使ったため、学生らがサランラップを巻いた眼鏡と、傘で防戦したことから広がった。 

 当初、民主派団体が10月1日に金融街での抗議活動を表明していたが、不満を募らせていた学生団体の一部が9月26、27日と政府庁舎敷地を取り囲むような行動に出て、17歳の学生リーダーが警官隊に逮捕されたことから一気に機運が拡大、9月28日に前倒しされ、民主化デモが始まった。(リーダーらは2日後に釈放されている。)

 いわば、ハプニングに乗じた自然発生的とも言えるが、一定数の、呼応する仲間が集まるまで待ち、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」方式で、道路の占拠が完成した。

 自由貿易港、国際金融都市として知られ、中国(北京)語と英語、広東語が飛び交う香港。各国からの観光客、ビジネスパーソンが行き交うこの地で、若者らは何を訴求しているのだろうか。

 1997年の香港返還から17年が経過した。ここでは、高度な自治が保証された一国二制度に基づき、行政長官が指揮を振るう。

 ところが今の行政長官の人気がすこぶる悪い。梁振英氏は、1200人の選挙委員会の投票で689票しか得票できなかった。689という数字は、行政長官を表す。

 返還直後の初代行政長官は香港の重鎮が就任し、中国にも配慮しながら、香港の自治を守る形でいた。しかし、その後中国は飛躍的な成長を遂げた。名実ともに世界の二大大国となり、あわよくば米国をも抜き去りたい中国は、建前と本音を使い分け、ジワジワと香港を自らの懐に手繰り寄せようとしている。

 香港基本法では2007年以降、普通選挙導入が検討できることを規定していたが、中国政府はこれを反故にし、2007年、2017年から普通選挙にすることを表明していた。

 しかし、中国国務院が6月10日に発表した香港白書では、「香港特別行政区の高度な自治権は固有の権利ではなく、ひとえに中央指導部の承認に由来するもの」というのが加わった。天安門事件25周年の直後という発表のタイミングも、市民には少なからず影響したと考えらえる。

 さらに、全人代常務委員会が8月末、香港の選挙制度について決定。蓋を開けてみれば、1人1票の投票は認めるものの、中国の意向に沿うリーダーが選ばれる仕組みが明らかになった。親中派の候補者から選ぶシステムは、真の自由選挙と言えるのかという不満が学生側にはある。

 もちろん、自由選挙への第一歩を得たのだから悪いことではないとの主張がある一方、これで押し切られ、今後、何ら選挙制度が変わらないのではという不安が、次世代にはある。

 占拠行動を率いるグループはいくつかあるものの、やはり17歳のリーダーが注目される(注:10月13日で18歳)。大学生の黄之鋒氏は、香港返還の前年生まれ。返還後の香港と同じ年というのも、何かの因果かもしれない。

 黄氏が最初に頭角を現したのは、15歳のときである。香港の教科書に共産党寄りの歴史を記載する「愛国教育」に反発した。メディアに登場した彼は、現役教師を相手に論戦を張り、机を叩いて感情をむき出しにした女性教師に、あなたは、そうやって学生に教えるのかと食ってかかった。

 17歳リーダーらもここまで香港市民の心を捉えると考えていたかは分からない。しかし、今の過酷な緊張感ある環境とともに成長し、参加者らに求心力が生まれるのは、台湾のケースに似ていなくもない。

 一つは、非暴力。妥協はしないが、流血を避ける。それが大衆の支持を得る最も正しいやり方だと知っている。

 共通するのは、若者が自らの未来を心配し、立ち上がること。これに対し、警察は下手に動けない。動くことにより、過去に民主化に立ち上がった両親や祖父母らのDNAを呼び覚ますとともに、未来を担う子供達とともに、運動体がさらに拡がることになる。台湾では大学生が活動をけん引したが、香港では、さらに若い高校生らが中心にいる。

 もう一つは、ネット活用。SNSなどを通じ、集合場所や助けが必要な場所、様々な指示、情報を交換する。マスコミに混じり、個人がUstreamやYouTubeで現場から中継を行う。情報公開が最大の武器になる。いわば、オープン・イノベーション革命ともいえる。

 香港の街頭占拠で特徴的なのは、台湾の国会占拠では、大学生や社会人らが自主的にネットでの中継を行っていたが、香港では、日刊紙アップルデイリーが運動を支えていることだ。情報発信は、アップルデイリー経由が中心であり、影響力が大きい。

 反占拠派(親中国+不良分子+バイトで雇われた主婦ら)は、そのアップルデイリー本社を包囲し、朝刊の搬出を阻止する行動に出たため、10月14日の同紙は7時間遅れで配達される事態も起きた。

 占拠の行方はどうなるのだろうか。その結果はまだ見えてこない。

 中国で四中全会が始まる10月20日までがデッドラインとも見られていた。香港政府による制御がうまく機能しないなら、中央が出てくるという算段でもある。当初10月10日に合意していた学生団体との対話は流れたが、香港政府は10月18日、再度週明け21日に学生代表と対話予定であることを発表している。

 結局のところ、香港にせよ、台湾にせよ、政府に抗議する形を取るが、それは、政府や政権担当者に対し、より具体的に中国と交渉し、自らの国や地域のアイデンティティ、民主主義や自由経済を守り抜く気概を持とうというメッセージである。


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