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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン10」
   ~マレーシア航空機失踪、台湾国会学生占拠、消費増税(1/2)

(櫻梅通信 2014/5号 日台文化協会)

 2014年春。

 アジアが世界から注目されている。

 3月上旬、マレーシア航空機が離陸後に行方不明となった。発生から3週間が過ぎ、インド洋上に機体の残骸らしき漂流物が発見されているが、不明機のものとの確認は取れていない。捜索場所が関係国それぞれの領海主張の海域であり、防衛上、多くの詳細情報をすぐに発表できる状況ではない。また、これを機会に、周辺海域で情報収集する動きもあろう。

 3月中旬~4月上旬、台湾では、学生による国会占拠が続いた。非暴力での平和的訴求が共感を呼び、50万人(主催者側発表)が総統府周辺に集結して大規模集会を開くなど、社会的うねりとなっている。

 4月、日本は、消費税率を引き上げた。超高齢社会での財政健全化には、消費増税が不可欠であり、社会保障費の赤字補てんに充てられる。合わせて、5.5兆円の経済対策や企業減税を実施し、せっかくの景気回復基調に水を差さないよう、慎重な舵取りが続く。

 以下、2014年4月10日までのアジア情勢の記述である。

・マレーシア航空機失踪

 マレーシア航空370便が3月8日に失踪してから、3月末で23日が経過した。

 3月末時点では、おおよその最終不明場所はオーストラリア西部パース沖約1850kmの海域ではないかと見られているが、航空機の残骸が回収されたわけではない。失踪の原因についても諸説あり、断定できない状況にある。

(1)捜索域が徐々に広範囲に拡大

 370便は、マレーシアのクアラルンプール空港を離陸後、ベトナム領空で突然レーダーから姿を消した。マレーシア航空の広報、あるいは、マレーシア運輸省の説明が曖昧で、情報は二転三転し、対応の不備が当初より指摘されていた。

 失踪して数日間、レーダーから消えた付近、すなわちベトナム沖の南シナ海を中心に捜索活動が行われた。なかなか見つからず、捜索に参加する国は日本を含め、米国、ベトナム、中国、オーストラリア、フィリピン、シンガポールなど10か国以上にのぼる。

 しかし、3月13日(6日目)になり、米国メディア(ウォール・ストリート・ジャーナル)の報道で、通信衛星のデータが存在することが判明。そのデータ解析から、不明機がレーダーから消えた後も飛行を続けていたことが分かった。マレーシアはいったん否定したものの、2日後の3月15日(8日目)に、ナジブ首相が会見。不明機の通信機器のスイッチが意図的に切断されたこと、また、不明機の針路として北ルートと南ルートの2つの可能性が提示された。なお、北回廊は、カザフスタンとトルクメニスタンの国境までのルート。南回廊は、インド洋南部に至る。

 これを契機に、各国が出し惜しみしていた衛星情報が続々寄せられ、南回廊が有力になる。オーストラリア・パースの南西沖2500kmの海域や、そこから北に1100km移動した海域で、衛星画像などから漂流物が発見されるが、物証を回収するに至っていない。

 現場は海流が激しく、天候も荒れやすい難所であることや、往復での燃料、つまりは捜索時間が限られることなどから、捜索は難航している。3月24日(17日目)になり、ナジブ首相が会見を開き、「インド洋西部で飛行を終えた」として同機の墜落を事実上認め、生存者がいないのではないかとの見方を明らかにしている。

 4月10日(34日目)現在、時間との闘いが続く。不明機のブラックボックスから発信された可能性のある信号を、捜索中の船舶が探知したとして確認中だが、信号は電波の寿命で次第に微弱となり、4月12日には消えると予想されている。

(2)失踪の理由が分からない

 消息を絶ったからには、なんらかのシナリオが考えられる。事故なのか、ハイジャックなのか。飛行機が故障あるいは爆破され、空中分解したのではないか。これは当初疑われていた説でもある。パイロットらの家宅捜索も行われ、彼らの人物像などに関しても、様々な憶測が流れた。

 前述の通りレーダーから消えた後も、飛行機からのデータ信号を衛星が断続的に受信していたことを米紙が報じているが、意図的に交信を絶つには、それなりの知識と、2人以上による物理的な協力が必要とも言われる。

(3)捜索協力と領有権問題の存在

 一連の件に対するマレーシア政府の不手際な情報開示には、失踪場所が軍事戦略上の要衝となっており、領海での覇権争いが背景にあることも指摘される。

 当初のベトナム沖にせよ、その後の北回廊、南回廊であるにせよ、中国とASEAN、中国とインドなどの間で、領有権を巡る対立が絶えない場所でもある。

 失踪機には中国人が多数搭乗していたこともあり、当初から中国軍は捜索活動に航空機、艦船などを精力的に派遣しているが、一方で、一番に残骸を発見することでの国際貢献と通信レーダー設備を含む探索能力、データ解析力をアピールする意図があるのではという見方がある。

 インド空海軍がインド洋の軍事的要衝で行っている捜索活動に対して、中国が応援要請を申し入れたが、インド側からは必要ない旨が伝えられている。今回の捜索活動とあわせた海域の情報収集にもつながる可能性があるとして牽制したとの識者の指摘もある。

(4)中国政府の国内向け対応 

 マレーシア航空ならびに政府の煮え切らない対応に、同機に150人以上が搭乗していた中国人の家族らは、抗議の声を荒げている。中国の駐マレーシア大使らは家族を見舞い、ケアに当たるほか、外交部もナジブ首相の会見を受けて、墜落と判断した全証拠の提供をマレーシア政府に申し入れるなど、中国政府の対応が中国国内の不満を高めないような配慮がされている。


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