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コラム

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「アジアビジネスのグランド・デザイン9」
   ~東京オリンピック2020と日本のものづくり再生(1/2)

(櫻梅通信 2013/12号 日台文化協会)

 2013年秋。

 消費増税への最終判断が迫る中、東京オリンピックの招致という命題がクリアされた。安倍政権にとっては、無事「ミッション・コンプリート」となった。

 安倍総理は10月1日の記者会見で、来年4月から消費税率を8%に引き上げることを発表した。増税決定を受けた株価等への影響、各方面での動きなどについては、次号以降に解説する。

 オリンピックの招致成功は、アベノミクスの「第4の矢」とも称される。安倍総理も、招致が決定したIOC総会終了後、そう呼んでも良いと語っている。

 世界全体が不確実な時代に入り、経済が緊密に重なり合う現在では、数年後に確約された世界的なイベントへの期待は高い。

 競技施設や交通インフラの整備が今後進むこととなり、観光ブランドとして日本の価値が改めて世界から認知される。オリンピックイヤー前年からのプレイベント、あるいは開催後に訪れるであろう真の観光客をどう惹きつけるのか。

 日本は、どのような姿を見せるのか。

・東京オリンピック2020

 1964年の東京オリンピックを経験し、その記憶がまだ残る皆さんは、すでに50歳を超えている。

 筆者が最初に日本に来たのがちょうどその年。当時6歳。同じ空気を共有していたはずだが、正直なところあまり覚えていない。ただし、その時代の昂揚感はテレビなどで記録映像をたびたび目にし、同じ時間に生きていたのだという思いを共有できる。

 日本社会全体が前向きになれるようなイベントの招致成功はうれしいニュースだ。日本は自信を取り戻し、次世代へとバトンタッチすることになる。

 これは日本の若者、子供たちに限らず、日本にかかわる人々、日本語を習得中の留学生や元留学生、さらには海外で日本の文化、特にアニメやゲーム、音楽などで、カワイイを慕う同志とのつながりへと拡がってこよう。

 今回の招致成功は、プレゼンテーションの成果だと言われている。

 最終プレゼンの冒頭、皇室を代表し、高円宮妃殿下がフランス語と英語で挨拶をされた。招致委員会の竹田理事長も旧皇族出身であり、IOCとの関係づくりでは各国ロイヤルファミリーの関係性も有利に働くことから、東京都は宮内庁の協力を得て、スピーチが実現した。

 各プレゼンターらは、東日本大震災に際しての各国からの支援への感謝とともに、スポーツの持つ力、さらに2020年を原点に、未来につなぐ五輪開催を強調した。

 最終候補として残っていたのは、東京(日本)のほかに、マドリード(スペイン)とイスタンブール(トルコ)。

 消去法で行った場合、最終局面でマドリードが有利とも言われていた。マドリードは、施設の80%が完成していたが、やはり債務危機での計画の不透明性が敬遠された。

 イスタンブールも、イスラム圏最初の開催、あるいは東西を融合する架け橋として期待されたものの、都市再開発を巡る不満がデモを誘発したため、IOC委員の賛同を得ることができなかったようである。

 国際イベントは、その開発規模や負担費用が年々大きくなっており、日本は計画に沿った確実な開催のための処方箋を2020年以降の各国にお手本として示すことを掲げている。

 大会準備を含めた今後の環境整備においては、ものづくりやサプライチェーンのための各種ノウハウが織り込まれることとなる。

 これに合わせて、いくつかのプロジェクトの前倒しが噂されるが、現状ではまだまだ未定である。

 たとえば、リニアモーターカー。予定では、2027年に東京-名古屋間で開業し、両都市を40分で結ぶ。これは、ロサンゼルス-サンフランシスコ間や、ボストン-ニューヨーク間に匹敵する。(米国の旅客鉄道(アムトラック)では、ボストンーニューヨーク間が現状3時間半ほど。)

 JR東海は、ワシントンにリニアモーターカーの売り込みを狙っている。あるいは、さらに国際都市間を結ぶことも視野に入れていよう。そのためには、開通時期を2020年に、どうにか前倒しができないかということだが、現状、JR東海からの返事はネガティブだ。しかし、それは民間単独の場合であり、国民からの声が高まればできないことではない。特に、名古屋まで40分となると、「ストロー効果」でオリンピック開催期間中から名古屋は潤うことになるので、トヨタ自動車の出資・協力など、いろいろ検討できよう。

 (注:ストロー効果とは、地方都市(名古屋)が大都市(東京)からの経営資源=ヒト、モノ、カネの流れを期待するが、実際には、大都市が地方都市を吸い上げることに留意)

 たとえば、ドライバーがハンドルを握らなくても走る「自動運転車」。日産自動車などが名乗りを上げているが、トヨタ、ホンダなど各社も研究に着手している。日産自動車は、2020年の市販化を目指すが、ニューヨークの次世代イエローキャブに日産車が採用されたことなどからも、海外を含めタクシー業界などで普及を目指す可能性も期待される。

 たとえば、ヒューマノイドロボット。まだ、完全自律とはいかないが、ホテルやショールームなど、特定の場所(部屋)ではロボットが介護し、サポートしてくれるようになろう。

 日本はSF映画などで、魅力ある近未来都市として描かれているが、ものづくりの再生・復興と、未来ビジョンの提起など、今後7年でどこまで迫れるのか、東京オリンピックの開催以上に、経済効果が期待されていると言えよう。


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