「美しき地方の時代」と「新陳代謝可能な日本」の創造を目指し・・・

コラム

記事一覧へ

「アジアものづくりプラットフォームと知財戦略」 (2/3)

(週刊「世界と日本」 内外ニュース2011/9/5号)

・パクリ新幹線

 では、最近の動きを見てみたい。世界から注目を集める一番の市場は、中国である。経済成長と共にこれから豊かになる中間層が増えれば、富裕層以上にメリットを享受できる。

 その中国からは、自動車産業の進出が相次いだ当時から、一貫して先端技術、最新の製品サービスの提供を求められている。

 製造業の工場移転では、研究所の設置を求められる。研究所を大学内に置いたとしても、日本とは考え方が違うので、リバースエンジニアリングしたものが一気に、国産として、中国国内のメーカーにばらまかれる。

 あるいは、海外で博士号を取得した理工系研究者が、新たに起業。コストとスピードで、瞬く間に中国国内のシェアを獲得し、さらに世界へと目を向ける。メガ投資ビジネスの到来である。

 そうした中での新幹線騒動である。

 6月30日に北京-上海間に開業した高速鉄道は、日本やドイツから導入した鉄道技術に改良を加え、自国車両としてデビューした。産経新聞では、「パクリ新幹線」と揶揄したものだ。

 さらに、その新型車両技術に関して、海外5カ国で特許申請を開始していることが明らかになった。米国では、GEとの製造協力を模索する。

 中国側は、先進国技術による速度200キロベースを350キロに改良していく段階で、いろいろな新しい発想をしているとの主張だ。だが、日本やドイツは、中国が提供するスピードでの走行については、安全を保証するものではないと指摘する。

・ダブルスタンダード

 留意すべきは、大型インフラ事業において中国側の海外からの技術導入のやり方だ。

 高速鉄道の場合、日独仏などから車両製造技術を導入。暫くは、大量生産をちらつかせるものの、実は国産化が最終ゴールとなる。 

 北京-上海間の和諧号「CRH380」には2タイプあり、A型は日本の技術、B型はドイツの技術をベースとしたものである。開業に先立ってメディアに公開されたのはB型。なので、似ているとは思わない。今回特許申請したのはA型、つまり日本からの技術供与である。

 中国が申請した特許の内容は、1年半後に明らかになる。逆に、相手が公開しない限り、1年半後までそれが何かは分からない。

 もう一つ言えるのは、日本側も新幹線単独でまるごと1つの特許技術というわけではないので、中国側がそれら技術に抵触する可能性があることだ。

 いずれにせよ、進出時から日本側で懸念していたことが現実のものになった。しかし、進出しなければ独仏などの欧州勢にみすみす市場を持っていかれる。そのジレンマをどう解決していくのか、悩みは尽きない。

・パクリの最前線

 日本の地名が商標登録される事例も増えている。JETROが今年6月に発表した調査結果では、都道府県や政令指定都市名の商標出願が複数例確認されている。

 中国では、「公衆に知られた外国地名」については、商標権侵害として登録できないが、逆に公衆に知られていない外国地名は、登録が可能となっている。

 既に一部の出願は審査を経て登録されているが、被害にあった日本の自治体も抗議措置の経験が蓄積されつつあり、出先機関経由で取り消し請求にあたる。

 それでも、いたちごっこが続く。今年2月に青森県が明らかにしたところでは、青森に似た「青ミァオ(ミァオは森の木がそれぞれ水)」を2005年に新疆ウィグル自治区の果物商が出願。県は、30センチ離れて見ると、青森に読めると異議申し立てをして、登録が無効となった。

 7月には、讃岐うどんを表す「讃岐烏冬」が、香川県からの異議が認められ登録されないことが決定した。この商標は、中国人が06年に登録出願していたもので、09年に中国商標局のホームページで申請中であることを確認した香川県が即座に異議申し立てをしていた。昨年には、副知事と業界代表が中国商標局を直接訪問して、申請破棄を要請、ようやく認められた。

 隣国韓国では、複数の意匠を保護する観点から、デザイン保護法の一部改正が行われ、2012年にも施行される見通しである。これは、デジタル化、グローバル化という産業界のニーズに対応したもので、国を挙げての国際競争力の強化に乗り出したと言える。(知的財産研究所報告書、2011年2月)

 日本政府は、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2011」で、グローバルネットワーク時代の戦略として、①国際標準化のステージアップ戦略、②知財イノベーション戦略、③最先端デジタル・ネットワーク戦略、④クールジャパン戦略の4つを掲げている。

 残念ながら、工程表は各省庁の持ち寄りであり、それぞれの戦略をどのように実現するかの具体性に欠ける。(もっとも資料はネット上に公開されているので、敵塩にならないよう配慮しているのかもしれない)。

 国際標準化では、EUが先行しており、日本からの提言はなかなか認めてもらえない状況にある。標準化に向けては、まずは使ってもらうこと(ドミナント標準)や、脱ガラパゴスが大切となるが、戦略という名称だけが勇ましい。


←前へ  1  2  3  次へ→