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コラム

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「アジアものづくりプラットフォームと知財戦略」(1/3)

(週刊「世界と日本」 内外ニュース2011/9/5号)

 3・11の震災から半年が経過した。

 国内では、震災復興とは別に原発事故対応、エネルギー問題などが大きくのしかかる。

 論点は2つ。

 一つは、仮に原子力発電所を完全停止した場合、中小企業を含め、ものづくりの海外移転は加速するのか。

 もう一つは、農林水産畜産などの流通問題である。国内も風評被害など課題を抱えるが、海外となると、さらに影響は深刻である。もともと各国は自国農産物の保護に動くため、輸入制限措置などが容赦なく発令される。

 これらは、円高や、国内の社会保障、年金問題なども絡み合う。

 結局、これまでの国内ビジネスは、震災や原発事故で時間軸の変化を強いられるため、だんだんと市場の縮小は避けられない。

 では、その代替ビジネスは何かということになる。

・アジアプラットフォーム

 提案は、アジアものづくりプラットフォームの再構築である。

 再構築としているのは、アジア市場を活用したプラットフォームづくりは、90年代央にも日本が仕掛けたことがあるからだ。

 96年発足のAICO(ASEAN産業協力計画)という制度は、ASEAN域内での分業体制確立を目指したスキームである。

 残念なことに、通貨危機とも時期が重なり、ASEAN加盟国間のライバル意識が強かったため、期待以上に利用が進まなかった。

 AICOがうまく行かなかったもう一つの理由は、日本からの配慮。米国が推進するAPEC(アジア太平洋経済協力)との兼ね合いで、なかなかASEANに強くコミットできなかったからだ。また、香港返還を目前にした中国や、アジア通貨危機前の韓国の台頭(ASEANへの接近、欧州との橋渡し役としてのポジション)も背景にあった。

・プラットフォームの輸出

 2010年代の新しいアプローチは、プラットフォームの輸出である。ここでプラットフォームと称しているのは、利益確保までのコミットを指す。

 具体的には、インフラをトータルシステムとして輸出する考えである。製品やサービスのばら売りではなく、アジア等が日本と組むことで、日本が辿ってきた軌跡、繁栄を共有できるという仕組み・スタイルであり、輸出先を中心とする広い地域に日本の影響力を行使していこうというやり方である。

 例えば、地デジでは中南米のほとんどの国が日本方式を採用したが、その突破口はブラジルでの採用と、工場建設であり、ブラジル大統領がトップセールスの役割を担った。

 このケースで留意したいのは、トップセールスは、必ずしも日本の総理や所轄大臣が海外現地に赴く必要がないことである。梃子の原理で、親密な関係にある相手国の技や力を利用し、成長拡大することは可能だ。

 プラットフォームは、現時点では、新幹線やスマートグリッド、エコシティ、水ビジネスなどが有望市場となる。

・ウィンウィン

 このときに、採算度外視で協力するのか、あるいはしっかりした友好関係を築くのかが問われる。

 良くウィンウィンという表現が使われるが、実は距離感、関係性の把握、維持は難しい。

 日本的な感覚からは、まずは信頼関係を作り、互いに協力となるのだが、そうとは限らない。

 仲間としては勘弁だが、もらえるものはもらいたい。いわば、縄張りでのお互いの切磋琢磨のケースも出てこよう。それが、国際ビジネスでもある。

 民主党政権以降、日本国内での議論の多くは、これまで通りのビジネスモデルを前提とするものだ。

 高いけれど、壊れにくく、全ての機能をこれでもかと盛り込んだものづくり。国内の厳しい競争を勝ち抜いたという自負がある。

 それを買う潜在顧客は、豊かな日本人であり、その日本人が使う高品質のものやサービスに憧れ、世界各国から金持ちが訪れるというシナリオ(強い前提条件)だ。「お金を払える人、払いたい人だけ、来てください。歓迎します…」。

 こうした殿様商売など、そうは続かない。うまくコラボレートしようとしても、相手に持っていかれる。持っていかれないように知恵を絞り、リスクを軽減するための各種手立てを行うのがビジネスである。

 市場がフラット化する中、「うまい、早い、安い」を実現できれば、ものづくりの拠点はそこへ移転することになる。その際、自国技術をどのように守るのか、ものづくりDNAをどう継承していくのかが課題となる。

 特に、アジアでのものづくりにおいては、模倣対策、知的財産権保護の観点からも対応が求められる。

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