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コラム

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「東日本大震災(2) リーダーシップ、計画停電、メディアCSR」(2/2)

(「現代リスクの基礎知識」 nikkeiBPnet 2011/03/31)

●エネルギー政策と計画停電

 首都圏に電力を供給する福島第一原発、第二原発の状況を見ると、当分の復旧は見込まれず、仮に原子炉が運転再開するにしてもかなりの年月を必要する。まして、ユーザーである私達がそうした原子力に頼る生活に戻るかは、別途検証が必要な状況だ。

・自主停電、協力停電

 原発をこのまま使わない、使いたくないというユーザーの志向が強まるのであれば、電力消費を抑制することも不可欠だ。計画停電の実施に伴い、駅や地下通路の電灯が消され、若干薄暗さを感じるが、ヨーロッパの街並みでは一般的な光景であり、むしろこれまでの電気消費にも反省が必要なのではないかという思いを強めた人も少なくない。

 東京電力では、3月14日から計画停電を始めた。停電が実施される場所は、当日の需要と供給のバランスにより決められるが、病院や在宅医療、店舗、レストランなどのサービス業、工場操業では混乱が生じている。24時間の通電が前提となっている半導体工場のクリーンルームや、基板組み立て関連作業では停電により生産ラインが停止した場合の復旧の負担を考え、生産停止などを選択している企業もある。

 鉄道は通常より本数を減らして運行し、百貨店や小売店舗などでは営業時間の短縮や臨時休業、公共運動施設でも臨時休業など、節電努力も継続して行われている。

 エスカレーターも、上りは動いているが、下りは階段利用、あるいは朝夕のラッシュ時以外はすべて階段などとなっているが、健康に良いという人も多かろう。もっとも、足腰が弱っている、あるいは乳児を抱えている子育てママの場合、都心深くに掘られた地下鉄を利用するには不便が多いのも事実だ。

 飲食店の一部には、懐中電灯をかざして、来客をさばくケースもある(牛丼の吉野家)。あるいは、キャンドルに切り替えたことで、雰囲気が増したと顧客に好評なレストランなども登場したようだ。

 大学の一部では、新学期の開始時期を4月中旬や5月の連休以降にずらし、計画停電に伴う電車の遅行や運休、大学のある地域(含む付属の教育施設)などの運用を工夫する動きがある。また、プロ野球も、セ・リーグは選手会とオーナーが対峙したが、結果的には、セ・パ両リーグが足並みをそろえて開幕を4月12日に変更し、首都圏の電力ひっ迫の回避に協力した。

 若い人を中心に、アニメに由来するヤシマ作戦(節電呼びかけ)も敢行されている。個々人が自宅のエアコンなど無駄なもののコンセントを引き抜き、こたつや布団にもぐりこみ、節電に協力。節電ポスターがいくつも登場し、学生等の有志ボランティアなどにより商店街などに貼られていった。少し前の、伊達直人運動(タイガーマスク現象)の進化系ともいえるが、こうした動きはSNSを通し、急速に広まった(NHK「クローズアップ現代」3月29日)。

 筆者は、計画停電が行われた当初から、「自主停電」や「協力停電」などの名称で、ユーザー自身がエネルギー行政に関与し、生活などで工夫することを薦めている。例えば、計画停電の時間帯の昼寝(シエスタ)や、その前後に食事時間をずらすなどの工夫である。

 夜間は電力に余裕があるので、夜型の人が増えれば、計画停電などが解消される方向に向かう可能性もある。計画停電する地域などでの料金体制の見直し、個人の協力へのインセンティブをどう引き出すか、さらなるソリューションの検討が課題となる。

 工場については、ピーク時を外し、停電のない夜間での操業などが検討可能である。従業員などの負荷は大きいが、夏場に向け、自社のものづくりやサービスをどうするか、ビジネスモデルの再構築が求められよう。

・総量規制

 各種インフラや道路などは徐々に復旧しているが、エネルギー問題はかなり長期化する。そうした現状を踏まえ、真っ先に改善すべきは何か。

 東京電力では、4月以降、気候が良くなれば、エアコンの使用量が減るため、夏まで計画停電はなくなるだろうと試算している。

 しかし、そうした計画停電に産業界は戸惑いを示している。

 いち早くいわき工場の復興を宣言した日産自動車のゴーン社長も、計画停電については別のやり方を考えていかなければとの主張である(テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」3月29日)。一日3時間、いつ停電するかわからないというのは、製造業には致命的であるので、総量規制にしてほしいという。

 確かに、大口の場合、一定量までは確実に電力が供給され、残りは自主努力(生産停止にするか、補助電源で回すなどの工夫)という対応は、現実的である。

 原発事故が収束するとなっても、復興には、エネルギー問題が重くのしかかる。猛暑はまた、乳幼児、高齢者や病人などには負担となる。ただ単に我慢するレベルではなく、昨夏の猛暑で脱水症状を起こし、命を落とした人もいることを鑑み、涼める場所や涼み方への知恵(疎開や帰省、林間学校、夏期休暇の分散取得などの工夫)が求められよう。

●メディアCSR

 CSR(企業の社会的責任)とは、企業が単に利潤追求に走るのではなく、企業市民としてどのように社会貢献するかを指す。企業は、環境問題への対応をさらに進めた形として、法令遵守、雇用創出、消費者対応、地域社会への参加、従業員支援などの面で積極的な取組みを見せるようになっている。また、そうした活動を周知するため、環境報告書からCSR報告書へと切り替え、広報にも重点を置いている。

 CSRとして、どのような貢献を実施するか、ボランティア休暇などを社員に与えることで、全社的な活動に昇華することを検討するケースが多いが、最もシンプルな方法は、本業を通した貢献である。

 その意味においては、メディアCSRとは、マスメディアが本来の報道機関として、事実を明らかにし、その事実を、必要とするユーザーに届ける行為と位置付けることが出来よう。

 その観点から、震災時のメディアのあり方を鑑みるに、まだまだ課題があるように見受けられ、新しい災害支援の形を検討するきっかけにもなろう。

・チャリティ・イベントの主催

 大規模自然災害が発生すると、募金や被災地への支援物資の収集などが行われるが、もう一つ可能なのが、テレビ局が中心となって実施するチャリティである。日本テレビの24時間テレビでも募金活動は行われているが、ネットやカード会社とタイアップし、あるいはデジタルテレビ向けに新しいプラットフォームを構築するなどして、チャリティ・イベントを主催することは可能だ。

 書いていて気が付いたが、必ずしもテレビ局が主催する必要はない。Ustreamなどを使いながら、SNSのポータル会社が主催することも可能だ。あるいは課金システムをもっている、携帯電話会社が手がける形もあり得るだろう。

 ラジオでは、4月9日(土)13時から10日(日)13時まで、ニッポン放送のチャリティ特番「24時間ラジオ」が放送されることになり、歌手で俳優の福山雅治さんがメーンパーソナリティーを務める。同番組は毎年12月24日の正午から24時間通しで放送されているが、東日本大震災の被災地支援のため、緊急放送を決めたものだ。

 ツイッター上では、「九州経済産業局からの話。アジアからの観光客が激減し温泉地は打撃を受けている。別府・湯布院など予約キャンセルがひどい所だと98%という旅館も」というつぶやきがあった。筆者は、さっそく「チャリティ温泉」を提案し、産官学での連携を模索している。チャリティのためのプラットフォームを構築し、違うイベントやコンテンツを流せるようにすることが、災害復興への力強い足掛かりになる。

・雑誌、テレビのお涙頂戴や表紙・タイトルでの煽り

 阪神淡路大震災の際にだいぶ学んだはすだが、この震災でも、メディアが他社に抜かれないように、大掛かりな取材態勢で現地入りし、レポート合戦が繰り広げられている。

 テレビや雑誌にその傾向は強く、被災者が不明家族を探すシーンや、体育館などでの避難生活の様子が、映像として撮られる。もちろん、メディア報道がなければ、国内あるいは海外に、悲惨な状況を伝えきれないが、どのような取材のスタンスを持ち、どの範囲までは取材可能なのかの線引きは求められよう。

 感情的に脚色し、お涙頂戴で全体が構成されることへの被災地以外の怒りも少なくない。同じ悲しみを共有し、関係者などを含め、被災者がいる状況を考えると、もう少し慎重さが必要となる。

 もう一つは、前回、災害ツイッターで指摘した大げさなタイトルや表紙に使う写真の問題だ。AERAは、表紙に放射能の防御服を着た作業員の接写写真を使い、読者からの反感を買った。すぐにネット上で編集長が謝罪したが、同誌に連載を持っていた作者が翌週に突然最終回を宣言するなど、まだ混乱がある。

 時間のない現代社会では、タイトルや写真などイメージですべてが判断され、それらが独り歩きする。こうした傾向、新しい読み方があるなか、さらには緊急時にはアイコンや標題だけで処理されがちな傾向を理解し、文章と中身が合致するよう、意識を高く持ちたい。


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