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コラム

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「東日本大震災(2) リーダーシップ、計画停電、メディアCSR」(1/2)

(「現代リスクの基礎知識」 nikkeiBPnet 2011/03/31)

 普段、私達が何かをマネジメントする場合、「グレーゾーン」(判断に迷うようなあいまいな部分)を意識しなければならない。現実の世界では、あちらを立てれば、こちらが立たずの状況があり、リーダーとはまさにそうした状況を判断し、事前に手立てを打ち、先々の不可抗力、不確実性に対処することが求められる。

 緊急時には、その対象範囲がさらに狭まり、24時間体制で迅速な対応が要求される。特に初動は重要である。一手打ち間違えると取り返しがつかないが、慎重になりすぎてもたもたすると、かえって影響が拡大することがある。科学技術の進化に伴って、価値観が変化するので、過去の成功体験に引きずられすぎず、対応方法も変えていくことが肝要だ。

 最適な(最善な)方法を考えたとしても、違う部分から、さらなる不都合が生じる。想定外の事象にいかに対処するか、不眠不休で改善を要求されるが、我慢強く、あきらめずに、制御することが求められる。

 緊急時に重要なのは、あわてず、あらかじめ作成していたルール(ベンチマーク)を守ることであるが、平時のルールが厳しすぎる(「べからず集」の羅列が続く)と、そのルールに縛られすぎるきらいがある。

 そうした中で、グレーゾーンをどう判断し、方向性を決めていくのか。事態の推移、社会への影響力を考慮し、トレードオフ関係を意識した的確なマネジメントがリーダーには求められる。

 前回(「東日本大震災(1) リスクマネジメントとツイッター力」)は、リスクマネジメント(緊急地震速報、BCP、帰宅困難者)とツイッターの影響力(情報の拡散、テレビ、ラジオなど震災弱者への対応)を取り上げた。

 これに続く第二弾では、「リーダーシップ」「計画停電」「メディアCSR」について考えをまとめたい。

 いつものように、事件事故の発生当時の第一報、分析などは、ツイッタ-「linsbar」等での日々の活動を参照願いたい。

●リーダーシップ

 リーダーには、自分から進んでなりたい人と、周りから推されてなる人の、大きく分けて、2つのタイプがある。今回のような国難には、それぞれが現場でリーダーとなり、あるいはリーダーをサポートすることが不可欠だ。オールジャパンで協力することで、課題を乗り越えることができる。また、そうした経験を積みながら、この国難を通じて次世代が学び、新たなリーダーとして進化・高度化することも期待される。

・緊急時のマネジメント

 東日本大震災では、当初想定したものよりも、はるかに大きなリスクが一気に押し寄せた。マグニチュード9.0の地震による広域でのハードインフラの破壊、場所によっては、10メートルを超える津波、市町村役場機能の喪失、多数の行方不明者の発生、原発の同時多重事故。

 震災発生直後から始まった安否確認、被災者救援、避難所のマネジメント、インフラの復旧。その間にも、原子力発電所を巡って多くのアクシデントが発生している。原子炉を冷却するため、あらゆる方法で水の注入が試されているが、現状では、放射線で汚染された水をどこかに封じ込め、一連の復旧作業を前に進めることが最優先課題となっている。海水を真水に変え、核燃料棒を冷やし、原子炉内のガスを過度に高めることなく、ベント(調整弁)を開放する。ただし、ベントを開け閉めすると、放射性物質が風に乗り、水や土壌を汚染する。

 そうした中で、リーダーは冷静沈着に、まさに、指導的立場にいられるかが問われる。例えば、大声をあげ、指示に従わなければ処分するというような威圧的な態度や言動はかえって現場の士気を弱め、罰則を嫌う組織人を萎縮させる。万が一にも、現場が告発し、メディアが事実を報じ、翌日に謝罪するなどがあってはならない。そうした事態では、リーダーのもと、チーム一丸なのか若干不安になる。混乱は組織に伝わる。

 政治主導を標榜する場合、配下に多くの対策本部を設置し、それぞれに大臣や首相補佐官を置くことになる。メインの二つは、原発事故への対応と、被災地救援。留意すべきは、縦割り社会で頻発する、横の調整が出来ず、類似する組織のどれを先に出すべきか、どこから任せ、最後の責任は誰が取るのかが見えにくい点だ。そうした部分を考慮し、リーダーは先回りしながら、確実な実行を目指すことになる。

 緊急時のリーダーや組織は絶えずバッシングにさらされる。初期動作は迅速なのか、現場の状況を正確に把握しているのか、現地に責任者を置いて、的確な報告を受けているのか。

 そのためにも、発するメッセージ、声のトーン、日々の言動、全体の把握状況、その根拠などを十分意識する必要がある。

・官房長官の采配

 震災直後から10日間あまり、枝野官房長官はひっきりなしに記者会見を行い、現状説明に徹した。当初の3~4日は不眠不休で乗り切ったため、ネット上では「#寝ろ」などのハッシュタグが付けられたほどである。

 官房長官は、総理の補佐役。平時でも、記者団を前に、政府や官邸の細々したことにコメントする役回りを担うが、緊急時にはさらにその采配が注目される。

 記者からの数々の容赦ない問いに対し、全体を構造化し、優先順位を伝えるなど、官房長官の冷静な対応が評価された。本人のスタンスは原発事故等の専門家ではないが、政治家として、疑問がある部分、納得ができない部分は関係者から説明を受け、国民が納得できる範囲を知らせようとする姿勢を貫くことだ。

 ただし、事態が長期化し、後から後から様々な問題が露呈するなか、やや後手に回っている(十分に東京電力や原子力安全・保安院をコントロールしていない)との印象がぬぐえない。

 危機広報としては、現場がパニックにならないよう、早め早めに次の手を打ち、当事者を安心させるということが不可欠である。当初のメディア対応のトーンが変化することで、事態の硬直化、政府内の混乱などといったイメージを想起させるので、留意が必要だ。

・指標(ベンチマーク)

 日本では、原子力利用にかなりのアレルギーがあるなか、40年かけて、原子力発電が年間総発電量の30%を占めるようになった。効率よくエネルギーを生成するため、ものづくりや大都市での自動化には欠かせないエネルギー源である。

 しかし、絶対的な安全神話が先行したため、想定外の緊急事態の発生にいかなる不都合も働かない、様々な指標でがんじがらめの状況に陥っている。

 象徴的なのは、放射線による水や土壌汚染。平常時の**倍という数値がメディアを通し、独り歩きする。

 数値にしても、1時間当たりなのか、年間の積算量なのか、マイクロという単位なのか、ミリという単位なのかが、時には省略され、時には間違えて、国内外に伝わる。その原因だが、メディアには文科系出身者が多く、科学技術分野でも、原子力工学や原子力発電、放射線医療などに精通している人が少ないなどが挙げられよう。

 水や土壌(つまりは野菜への付着)では、消費者への安全安心のため、真っ先に出荷制限や摂取制限が設けられたが、対象となる地域が拡大すれば、影響を受ける(パニックになる)住民(関係者)が急増する。また、その後に制限が解除されたとしても、風評被害が残る恐れがある。

 退避勧告にもグレーゾーンが存在する。20キロメートル圏内までは避難指示を出され、20~30キロメートル圏内は屋内退避指示となると、物資を運ぶドライバーには30キロメートル圏までは安易に立ち寄れないという心理が働く。20キロメートルまでの住民にしても、病人を抱え、長く暮らした街を離れたくないと考える高齢者がいる。治安が悪化するなどの二次的な影響もあり、自衛隊や警察などが巡回を始めた。

 そうした中での、諸外国大使館の国外退避勧告(つまりは日本を離れよ)という指示は、首都圏を慌てさせた。実際には、米国は米国国内で同様の事故が起きた場合のマニュアルに従っての対応指示であり、各国は、計画停電やコンビニなどでの物資の買い占めなどを鑑み、一時帰国を促している。

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