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コラム

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「東日本大震災(1) リスクマネジメントとツイッター力」(2/2)

(「現代リスクの基礎知識」 nikkeiBPnet 2011/03/29)

・帰宅困難者問題

 首都圏に関しては、今回の震災では震源地が離れていたため、室内の物の散乱や一部地域での液状化を除けば、道路などは無傷であった。16時ごろには終業を早め、帰宅を急ぐ人が出はじめた。自宅に高齢者や乳児幼児を抱え、家族への関心が高まるからである。東京都が2006年にまとめた首都直下地震に関する報告書でも、発災直後の外出者のうち、何としても自宅に帰ろうと努力するとした人が3割に及ぶ。

 ただし、震災直後の首都圏では、JRや私鉄が線路の安全点検などのため、相次いで運転を取りやめていた。歩道に人があふれ、道路も渋滞が予想されるため、帰宅ラッシュの時間帯には、官房長官が会見でわざわざ、県をまたぐなど遠方の場合、無理な帰宅を避け、なるべく事務所など安全な場所に留まるようにアナウンスしている。

 その後、20時50分ぐらいから、銀座線や半蔵門線の一部が運転を再開。日付をまたぐ頃にはその他の私鉄も徐々に運転を再開し、滞留していた多くの人が帰宅できるようになった。私鉄はできる限りの運行を夜遅くまで続け、帰宅の足を確保するために乗り継いだビジネスパーソンも少なくない。こうした中、JRだけは点検を理由に、翌朝まで再開しなかった。多くの駅内には帰宅困難者がいたが、新宿駅などでは、未明にシャッターを閉め、利用客を外に出したため、次に行くべき場所が解らず、利用者が困惑するケースも見られた。

 なお、帰宅困難者には、自宅と距離が離れており通勤、通学先から帰れなくなってしまった人に加え、たまたま買い物や出張、取引先への営業などで居合わせ、土地勘がない人なども含まれる。

 特に、地震直後は、高層ビルや雑居ビル、商業施設などから人が一気に吐き出され、避難するため、かなり雑多な状況になる。さらに、電車など公共交通機関が止まるため、ターミナル駅ビルなどには、人があふれる。

 多くが徒歩で帰宅しようとした場合、道が混雑し、水分補給やトイレの利用には長蛇の列となる。拠点となりそうな「場」は、あらかじめ決められており、コンビニやガソリンスタンドは開放されているものの、女性や子供には必ずしも安全ではない。今回、首都圏では問題にならなかったが、散乱するガラスや折れた電柱、切れた電線、さらには余震などによる二次災害などにも留意が必要だ。

 帰宅困難者問題について関心のある向きは、「首都直下地震による帰宅困難者問題(1)」「首都直下地震による帰宅困難者問題(2)」を参照のこと。

●ツイッターの影響力

 筆者は、震災直後から10日間程、かなりの頻度でツイッターに震災関連情報を提供していた。(3月11日のつぶやきの様子は、ツイログ参照のこと)

 地震直後は、「火の元の確認」「余震や津波への警戒」、やがて、「鉄道など首都圏での運休の様子」、さらには「帰宅困難者問題」と、記述した内容は時間経過とともに、変えている。

 95年の阪神淡路大震災のときは、ネットの黎明期にあたり、情報収集と企業等への提供には、ニフティサーブを駆使し、ワープロなどで企業支援情報としてとりまとめ、広告会社(博報堂)の一斉ファックスを借りる形で、送信し続けた。

 今回は、ツイッターなどを活用したため、拡散も容易だったが収集する情報をどう見極めるか、あるいは拡散してきた情報に含まれるデマ(本人が意図せずとも、結果にデマに加担するケース)をどう断ち切るかに神経を集中させた。

・ツイッターによる情報の拡散

 ツイッター上でのデマあるいは拡散による混乱は、伝聞で聞いたものが定かでないケースで発生する。

 ここでは、特徴的なものとして、(1)RTやハッシュタグ、(2)時間軸、(3)メディアの見出しのつけ方、(4)自己責任によるつぶやきの解釈、(5)学者らの整理整頓の五つを挙げたい。

(1)RTやハッシュタグ

 被災地での物資の欠乏や困窮、不明者捜索などについてのツイートは、繰り返し善意のRT(リツイート)がなされる。応援のメッセージなどが付いたものが自身のタイムラインに大量に流れることになるが、これらを排除するには、公式RT(単純に、システムにあるボタンをクリックし、自らは何も書き込まない)が望ましい。同意や賛意を表し、あるいは自らのネットワーク(フォロワー)に対し、情報提供をすることで防げる(公式RTは、集約され、一度RTされたら、繰り返して情報が届くことはない)。また、情報を集約するには、ハッシュタグ(#)をつけるが、これに自らのコメントを足してしまうと、応援しているつもりが、有用情報が埋もれてしまうので留意が必要である。

(2)時間軸

 もう一つ、時間軸の問題がある。RT自体は正しいが、既に数時間~数日経った情報にRTすることで、あたかも今浮上した問題であるかのような状態が続く。平時ならば良いが、緊急時では、一刻を争うような安否確認、あるいは救援要請などのツイートがある。暫くして、そうした混乱に気が付き、直接それぞれの警察や消防、救援本部などに連絡し、解決を目指す動きもあった。

(3)マスコミの見出しのつけ方

 三つ目は、マスメディアの見出し(タイトル)のつけ方である。なるべくセンセーショナルに記事を見てもらおうとする習性が働くケースが多く見られた。原発事故=恐ろしいことが起きるというイメージだけが先行し、放射線と放射能を取り違えたり、海外からの見方などが大げさに紹介されたりもした。

 これは、原子力発電所の構造などを含め、科学技術が複雑なため、中途半端な理解のまま、メディアに流してしまったことや、海外メディアなどが取材する際、東京電力や原子力安全・保安院の説明を理解できないこと(裏返せば、説明が下手)に起因する。

(4)自己責任によるつぶやきの解釈

 ツイッター(あるいはツイッターを見たのちの携帯メールなどによる個人ネットワークへの配信、たとえば、ママ友)などでは、「ちょっと小耳に挟んだのだけど」という情報もそのまま流される。流した方とすれば、情報が多ければ多いほど、読み手が判断に困らないだろう、あるいはツイッターは緩やかなコミュニケーションツールだから、あとは見た人が自己責任で判断すれば良いという考えが根底にあるようだ。

 この傾向は、中東での一連のジャスミン革命を目の当たりにして以降、国内ツイッターでもますます顕著になっている。遠く離れた異国の事象で、こちらは日本語でのツイートであれば、さほど影響はないが、今回の震災のように現在進行形で事態が急を要するなか、内容をあまり確認せずに、安易に動くことは危険性を増す。

 中には、英語ソースの中身を吟味せず、タイトルや全体を読んだ印象(つまりは微妙なニュアンスを読み取れず、媒体の持つバイアスを加味することなく)を流してしまうケースもある。

 こうした行為が、フォロワーが多いアルファブロガーやメディアに登場する文化人などの場合には、本人の立ち位置や意図とは別に、影響は大きくなるので、細心の注意が求められる。

(5)学者らの整理整頓

 原発問題が深刻さを帯びるなか、物理や原子力工学、放射線医療などの専門家が政府発表の数字や各地で観測される数値をもとに、現状が安全かどうかの判断を客観的に与えた。例えば、東京大学の早野教授、同じく東京大学の中川恵一准教授による「チーム中川」、東北大学の北村正晴名誉教授などが注目された。中川氏は、テレビでの解説にも登場している。こうしたツイッターでは、自らの専門領域をしっかり示し、人的ネットワークを駆使してそれぞれが連携することで、複雑なシステムである原子力発電やそこから噴出する様々な問題(放射線物質の飛散状況、水道水などの汚染状況など)が可視化された。

・テレビ、ラジオと災害ツイッター

筆者は震災後、テレビからのニュース、余震などの速報を定期的にツイッターに書き込んでいるが、途中からラジオ情報も併せて流している。

 ラジオにはラジオならではの機動力があり、停電の実施状況などを含め、帰宅途上の被災地(含む首都圏)に多くのきめ細かい地域情報を提供可能である。

 震災から数日が経過し、余震が続き、原発事故が深刻化するなか、テレビなどを見ることが出来ず、筆者のツイッターからの情報に頼った方が少なからずいた。政府も記者会見の際に手話を用意したが、手話が早すぎ、混乱して追いかけられない聴覚障害者にとって、ツイッターを経由した情報提供は、かなり有用であった(感謝メールを頂戴した)。他にも、子育てに時間を取られニュースをゆっくり見られないケース、就業時間中にネットなどに自由にアクセスし情報を収集できないケースなどを想定しての情報提供は今後とも緊急時には有用となろう。

 こうした災害情報を提供するツイッターでは、視認性(「タグ」のつけ方と分類)、再現性(エビデンス、ニュースソースなど情報源を記載)、時間軸(リスクマネジメントの進行に合わせ、提供すべき情報の取捨選択)などを意識することが求められる。


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